MOXUの百鬼夜行・其之壱

ここではボチボチとイラストの説明なんかをしてみようかな、と。

ネタばらしは自分の首を絞めかねませんが、少しでも絵を楽しんでもらえるようにと考えています。

 

各妖怪の言い伝えの詳細はウィキペディア等でどうぞ(笑)

 

一応のポイントは、「ありそうでなかった表現」

 「適度にリアルな設定、デザイン」 「構図」

「ディテールにこだわったディフォルメ」 等々

 

 

『昔の絵師が、現代人の知識を技術を持っていたらどんな風に描くんだろ?』が自分のテーマです。 

 

様式美という点で、色んな時代の格好した人物を描いていますが、

現代人はいません。

やはり信仰する人達あっての妖怪だと思うので、今の時代の人には妖怪はイマイチ似合わない気がして。

 

 

  

白面金毛九尾の狐

なんともメジャーどころ。

個人的に大好きな妖怪。

玉藻前の正体がぁあ!!?という場面です。

口にちゃんとデスマスク咥えてるんですよ。

中国→インド→中国→日本でう討たれるってのが何とも素敵。

殺生石も一度見に行きたいなぁ。

 頭は猿、胴は狸、手足は虎、尾は蛇、由緒正しき鵺。MOXUの御膝元、京都は二条城に現れたそうな。

 

 得体の知れないものの総称を鵺と言いますが、昔の人の発想力は凄いですよね。 実際は適当に動物くっつけて、「なんじゃこりゃ、気持ちわり!」とか言ってたのかも。

女郎蜘蛛

 女性は怖い、そういうことです(笑)

 実際に存在するジョロウグモは腹が長いので、モチーフはそこから。

腹側が顔、というのがあまりありませんが、自分的にはむしろこっちだろ!みたいな(笑)

 口から糸を吐く、というのも理に適ってるでしょ?

「人は何を気持ち悪いと思うのか」を考えながら描きましたが

いかがでしょう?

おとろし

 神社でいたずらする者を懲らしめる妖怪、と言われていますが、実際にその正体は不明。

 あんまり大口開けてるおとろしの絵がなかったもので描いてみました。

基本的に固定概念や伝承絵のイメージは壊したいのですが、こいつはなかなか無理でした。

だってもともとのデザインが秀逸過ぎるんだもの…

牛鬼

 暁の海にやたら躍動感のある牛鬼!こいつもメジャーどころですが、かなり色んな地方に言い伝えが残っていて、性質や姿形も様々。 水辺の恐ろしいものの総称であったりもします。

 鬼頭のほうが有名?なので、ひねくれて牛頭のものを描きました。

ちなみに目は水棲動物っぽくカエルモチーフです。皮膚の表面にフジツボはどうか?と思ったんですが、妖怪と実際の生き物の共生はないな、ってことでその案はボツにしました。

化け狸

 すこしコミカルなものを…、となれば狸しかないでしょう!という感じで描きました。

 

 狸三匹によるジェットス〇リームアタックです(笑)

 自分の力不足でもあるんですが、妖怪を描くとどうしても画面が暗くなりがちな中、比較的明るい作品です。

一つ目のメタリックな質感がお気に入り。

狒々

夕暮れ時、旅の丈夫がふと松の木を見上げると…

 

 野生動物の怖さを表現してみました。人間も味方とも敵ともつかない、何を考えているのかわからない瞳がポイントです。

 

 この作品の一番のお気に入りは、松の木の表現だったりします。

土蜘蛛

 これは伝わっているデザインをわりとそのままに。 描くと決めた時点で構図も色もイメージできていた珍しい作品です。

 

源頼光ということで源氏→鎌倉時代の鎧武者です(あってます?)

 

構図に迫力があって、なかなか好きな作品ですね。

蟹坊主

 山梨県に現れた妖怪。

 お坊様と対峙したというエピソードがしっかり残っていたので、構図は苦労しませんでした。 が、問題は色です。当初、完成の直前まで赤い蟹にしていましたが、どうもしっくりこない。気分転換にシャワーを浴びていたときに、ふと「ブルーロブスター」が頭をよぎり、そのまま真っ青に(笑)自分の感覚にハマるとスイスイ色塗りもはかどりました。

 蟹坊主というと「ゲゲゲの鬼太郎」のEDが有名ですが、山奥の寺にワタリガニデザインはないかと思い、サワガニとザリガニを足したようなテイストにしたわけです。

波山・婆娑婆娑

 別名「犬鳳凰」。バサバサして人を驚かすだけの愛媛県の妖怪だそうです。名前に一目惚れして描いちゃいました。

 自分が一番憧れる画家?が江戸時代の伊藤若冲なのですが、彼がよく描いたモチーフが鶏でした。ということで鶏テイスト満載になりました(笑)

 背景の描き込みは得意ではないのですが、竹林に現れる妖怪だということで、竹とクマザサ、結構気合い入れて描きました。

白澤

 古くは中国黄帝の時代から伝わる瑞獣。 徳のある君主の治世に現れて、災害マニュアルを授けてくれるそうです。徳のある君主…日本には当分現れそうにないですね。

 また江戸時代には白澤の絵が厄除けとして大流行したのだとか。

 デザインはわりと伝承どおりの定番な感じです。顔の表情が苦労しました。上の波山がコテコテな雰囲気なので、スッキリアッサリを目指したのですが、ところどころしっくりきていない(特に背景)ので、ちょっと研究して手直しするかもです。

鬼女

 女性は怖い第二弾です。

 季節的に紅葉シーズンなので、鬼女紅葉をイメージして描きました。橋のたもとで武士と相対しているシーンです。

 着物は百足、扇子は髑髏と蝶、とにかく鬼女は美しく描きたかったのですが、いかがでしょう?

 それともう一つ、派手にたなびく着物ですが、じつは般若の横顔を表していたりします。わかりますかね?

 

 

 

以津真天

 「太平記」に出てくる怪鳥。体長約4.8m。 疫病や戦乱による死体を放置しておくと現れ、「いつまでいつまで(放っておくのか)」と啼くそうな(実は良い奴なんじゃないの…?)。死体を貪るという話もあります。怪しくてやかましいので鏑矢で撃ち落とされました。

 ありえないかもしれませんが、描写がハゲワシに似ているような気がしなくもないですね。

 鬼のような頭という伝承ですが、嘴を強調、髑髏の模様もつけました。熱帯の鳥のイメージです。鳥の足と髑髏は描いていて楽しい♪

なんだかんだで各種動物図鑑と歴史図鑑は手放せません。

 

油すまし

 天草地方に伝わる妖怪。

「昔この辺には油すましという妖怪がおったんじゃ」「今でもいるぞ~」のやりとりが地味に怖すぎます。

 わりと有名なわりに、その姿形に対する詳しい記録は残っていないのだとか。京極夏彦氏曰く「釣瓶落としのように、油瓶が上から落ちてくる妖怪ではないか」との事。……油瓶? というわけで油瓶を調べるところから始まりました(笑)顔からはボコボコと色んな形の油瓶を生やし、手には菜種油の原料、頭の蓋布にはガマの油にちなんでヒキガエルの模様をあしらいました。

すねこすり

 岡山県に現れた、股間やすねにひたすらまとわりついてくる妖怪。驚いて転んじゃうよ!

 前々から描こうと気になっていた妖怪ですが、いざ調べてみてビックリ!「犬のような形をしている」…なん…だと?

初めて知りました。水木先生の猫型しか知らなかったもので、改めて大先生の影響力を感じましたよ。

ということで犬と猫の中間のようなデザイン、そしてこすり機能(?)に特化しているため後足はありません。

猫好きの自分的にもなかなかかわいい感じで気に入っています。ちなみに後でモジャモジャしているのは鬼灯です。

道成寺「清姫」

 安珍・清姫伝説の清姫です。2013は巳年ですし。

 伝承の詳細は書きませんが、これも女性の怖さが際立つお話です。というか安珍からすると理不尽すぎる気もするのですが…

 気合いが入っているのはやはり「鱗」です。ここ抜きには蛇を描いたとは言えないでしょう(笑)「細部に神は宿る」と言いますから。あとは後ろ髪が蛇になっているのもポイントです。

 そして…女性にまつわる妖怪を描くと必ず体調を崩します(汗)多分精気を吸い取られるんでしょうね(@_@;)

 

べとべとさん

 これもけっこうメジャーですかね?夜道を後から着いてくる妖怪。

「べとべとさん、お先にお越し」と言うと消えるそうな。

「べとべと」ってことでカタツムリをイメージしました。後は足というより手で迫ってくるほうがべとべとっぽいかな、と。そして目の部分は「レウコクロリディウム」です。詳しくは調べてみてください…僕は平気ですが、けっこうグロいです。

 背景は、家の近くの散歩道がモデルです。「べとべとさんロード」と名付けました(笑)

磯撫で

 見ての通り海の妖怪です。尾びれを水面から出し、針の沢山付いたシッポで撫でる様に人間を水中に引き込むことからこの名前が付いたそうな。 こいつが怖いのは、遭遇したら絶対に逃げられないというところ。

 最初全体像のデザインが思い付いたのですが、そのまま描くとただの魚のクリーチャーにしかならないので、こんな感じに落ち着きました。やっぱり、「姿が見えない、正体がわからない」というのがこいつの怖さかな、と思ったので。

 漁師が投げているのは、舟幽霊対策の「底のない柄杓」です。

稲生物怪録

 稲生武太夫を主人公にした、一か月の間次々に妖怪が出てくるっちゅうお話です。

 それを一枚に描いちゃいました!

今回網羅できたのは、…『でっかい老婆の顔』、『曲尺のような手』、『蟹みたいな石の変化』、『ニョキニョキ生えまくる手』、『どんどん出てくる虚無僧』、『飛び回るお歯黒逆さ首』、『増殖して爆笑する顔のような物』、『釜がミミズに』、『石塔の下から業火』、『高下駄が飛び回る』、『次々と種だけになる柿』、『蝶々ヒラヒラ』『魔王・山ン本五郎左衛門』です。なかなかの力作になりました(^o^)

羅生門の鬼

 京都の羅生門で頼光四天王の一人、渡辺綱が鬼の片手を切り落とす、という話です。

 いちおうキリのいい20枚目で「鬼」を描きました。

 鬼のデザインはひねっていませんが、なかなかいい表情ではないでしょうか?

 人と妖怪の取っ組み合いってなんかイイですよね。

 浮世絵なんかでよく見られる渡辺綱の家紋入りの着物がカッコいいな、と思って描いてみたら、雰囲気が浮世絵に近づき過ぎてちょっと焦りました((+_+))

ちなみにこの技の名前は「手足絡め髪の毛極め体重乗せ斬り」です(笑)